犯罪・刑事事件の解決事例
#加害者 . #暴行・傷害

交際相手に暴力を振るった女性からのご相談

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澤田 剛司 弁護士が解決
所属事務所弁護士法人若井綜合法律事務所新橋オフィス
所在地東京都 港区

この事例の依頼主

20代 女性

相談前の状況

時間の問題だとは思っていたのですが、彼氏から別れ話を切り出されてしまいました。と言いますか、私も別れたいとは思っていたので、彼のほうから言ってくれて助かったくらいでした。しかし、彼の追い詰めてくるような言い方にイライラしてしまい、激しい口論になってしまいました。確かに彼は間違ったことは言っていませんでした。ほとんど全て正論だと思います。ですが、あまりにもネチネチと、「どうせ別れるのだから言いたいことを言ってやろう」という気持ちが見て取れたので許せませんでした。そのまま、ここでは書けないような口汚い罵り合いが続きました。そこで、彼はついに言ってはいけない事を言いました。「お前高校のときに散々浮気したよな?」と。私たちは高校生の頃から交際をしており、もう交際期間は7~8年となっていました。そして彼の言うとおり、私は高校の頃たくさんの男性と交際していました。自分で言うのもなんですが私は容姿が整っているほうですし、「軽い女だ」という噂が高校内で広まっていることは分かっていました。勝手な言い分なのかもしれませんが、私の感覚としては「交際開始→浮気」という順番ではないのです。そして私は高校時代の自分のことを恥じています。それからは順風満帆に交際を続けていました。何度か喧嘩をしたこともありますし、私としては彼に対して「これはどうなんだろう……」と感じた経験もいくつかありますが、「彼が黙っていてくれるのだから、私も黙っていよう」と考えるようにしていました。今考えれば、あまり良くない事だったのだと思います。日本には「本音と建前」の文化がありますが、それは私達にとってはダメだったのでしょう。私はだんだん彼と一緒にいるのが疲れてきたので、お互いに社会人になってからは、私のほうからあまり彼に連絡を入れなくなりました。「仕事はどう?」ですとか「最近どう?」などと聞かれたくなかったのです。私自身は何ということもない生活をしていたと思いますが、それでも彼に報告するのが億劫になっていました。しかし、彼のほうは特に私を煙たがってはいないようで、頻繁に連絡をくれていました。彼が私の気持ちを知っていたのかどうかは今となっては分かりませんが、「今日は○○があった!じゃあまた!」のような、私が返信しなくても良いようなメッセージをくれることが多くなりました。ですが、さすがにそんなメッセージもだんだん減っていき、連絡をしないまま1カ月くらい経過したところで、彼に自宅に呼び出されました。そして、話は戻ります。彼は別れ話を切り出し、「私のこれまでの問題点」を淡々と語ります。ついに「高校時代の私の浮気(とは私はあまり思っていないわけですが)問題」に触れてきたので、私も堪忍袋の緒が切れました。カッとなって思わず全力でビンタしてしまったのが間違いでした。すぐに警察に通報されてしまい、現行犯逮捕されました。ビンタしてすぐに彼はスマートフォンで電話をかけ始めました。私は困惑しましたが、まさかこれほど迅速に警察を呼ぶとは思いませんでした。また、彼の言い分も・今までに何度も暴力を振るってきた・これまでにも別れ話を切り出したことがあるが脅されて別れられなかった・彼女(私です)に性交渉を強要されたなど、身に覚えのないものばかりでした。そして私は接見という形で弁護士さんを呼びました。確かにビンタしてしまった事については完全に私に責任がありますが、理不尽に罪が重くなるのは避けたいです。

解決への流れ

「不必要に罪が重くなるのは嫌だ」という気持ちはありました。しかし、正直なところ「私を怒らせてビンタをさせる→即座に警察に通報する」という彼のやり方が周到過ぎて恐ろしくなっていました。これから彼に何をされるか分からないという気持ちになっていました。今冷静に考えればそんなことはあり得ないはずですが、その時の私は本当に「懲役10年や15年くらいになってもおかしくないのでは……」と考えていました。そして弁護士さんと接見するときも、最初のうちはあまりちゃんとした受け答えができずにいました。すると弁護士さんが「まずは難しいことを考えず、本当にしてしまったことは認めましょう。ですが、していない事については強い心でしていないと答えてください。他のことは今は何も考えずにいてください」と言ってくださって心が落ち着きました。言い換えれば「正直になる」ということですが、このようなシンプルな指針を示してくださったことで自分の中に活力が戻るのが分かりました。そして、その日のうちに彼と示談をすることになりました。そのときは彼も冷静になっていたようで、どことなくバツの悪そうな表情をしていました。対する私は「ビンタしかしていない」という事実からくる自信があったので、むしろ「示談金を払って、別れてやる」というくらいの気持ちでいました。結果的に示談金も大した金額にならずに済みました。正直なところ「これくらいのお金でこの男を捨てることができるなら、むしろ安い」という気持ちでした。ただ、とにかく暴力を振るったのは失敗ですし、人として許されないことだと思います。これからどのような人に出会うか分かりませんし、また恋人ができるかもしれません。そしてその恋人ともし喧嘩などをしても、絶対に手を出さないことを心に誓っています。憔悴していた私に元気を与えてくださった弁護士さんには本当に感謝しています。ありがとうございました。※これらの内容は個人を特定できないよう、相談者の承諾を得て編集し載せております。

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澤田 剛司 弁護士からのコメント

私としては、当初被疑者となっていた依頼者様は本当に危うい状態だったと感じました。この先のことを非常にネガティブに考え、「言われたことは何でも認めたほうが罪が軽くなったりしないでしょうか?」とさえ仰っていました。ですから、依頼者様も語っていますが、まずは物事を単純化して考えていただくために、「あった事はあった、なかった事はなかった」と答えてくださいとアドバイスしました。それが功を奏したのか、そこからは流れるように示談までたどり着くことができました。不起訴処分となりました。また、本件のように「つい手が出てしまい、警察を呼ばれた」というケースは少なくありません。そして、「これくらいで警察に通報するなどおかしい」と主張する被疑者もいますが、その言い分はほぼ通用しません。「あえて怒らせて、手を出させる」という人もいないわけではありません。正当防衛など特殊なパターンを除き、どのような事情があったとしても手を出して時点で負けであるという事を心に留めておいていただければ幸いです。