福井県の永平寺で男性の修行僧が、座禅体験などの研修に参加していた女子高生にわいせつ行為をしたとして、除籍処分となったと報じられています。
報道によると、この修行僧は今年6月から7月にかけて、計14人の女子高生に対し、服の上から尻を触るなどの行為を繰り返していました。寺の聞き取りに「イライラしてやってしまった」と話したそうです。
永平寺は曹洞宗の大本山として知られ、参拝者や修行体験者を受け入れていますが、宗教施設内でのわいせつ事案は大きな波紋を呼びそうです。僧侶でもある本間久雄弁護士に聞きました。
●わいせつ行為は「犯罪」に問われる
──寺院で修行僧が体験者にわいせつ行為をした場合、犯罪に問われる可能性はないのでしょうか?
当然犯罪に問われます。
まず、永平寺がある福井県の「県迷惑行為防止条例」違反が考えられます。同条例3条1項1号は「衣服その他の身に着ける物の上からまたは直接人の身体に触れること」を禁止しており、違反した場合は、1年以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金に処せられます(同条例12条1項1号)。
また、下着の中に手を入れたり、長時間触り続けるなど、より悪質な態様であれば、不同意わいせつ罪(刑法176条1項1号)に問われることになります。この場合の刑罰は、6カ月以上10年以下の拘禁刑という重い刑罰が科されます。罰金刑はありません。
●寺院も「使用者責任」を問われる可能性
──加害者個人だけでなく、寺院や宗教法人に対しても民事責任が及ぶのでしょうか?
民法715条1項は「ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う」と定めています(使用者責任)。
ここでいう「事業」には非営利の宗教活動も含まれるので、座禅体験などの事業に該当するでしょう。また、「他人を使用する」とは、雇用契約に限られず、事実上の指揮監督関係があれば認められます。永平寺と修行僧との関係はこれにあてはまると思われます。
したがって、修行僧による座禅体験中のわいせつ行為について、永平寺は「使用者責任」を問われる可能性があるといえます。
●被害防止と参加者の安心につなげるには?
──体験型の修行や宿泊プログラムは全国の寺院でおこなわれています。今後、どのような防止策をどう講じるべきでしょうか?
次のような対策が考えられます。
・担当者にハラスメント防止研修を受講させる
・プログラムマニュアルを策定し、僧侶(職員)らに徹底させる
・防犯カメラやマイクを設置し、トラブル時に事実確認できる体制を整える
・参加者対応にあたっては、男性だけでなく女性の僧侶(職員)も関わらせる
こうした取り組みを重ねることで、被害防止と参加者の安心につなげる必要があります。