14678.jpg
深夜のタクシー、客の行き先は自殺の名所「東尋坊」…「乗車拒否」できるのか?
2016年08月22日 09時36分

「夜中に東尋坊へ連れて行けと言われ、背筋が凍りました」。福井県のタクシー運転手であるAさんは、過去のインパクトの大きかった客を振り返る。

Aさんはある日の午前1時ごろ、1人の50代男性を乗せた。その男性客に指示された行き先は、なんと自殺の名所ともいわれる「東尋坊」。サスペンスドラマなどでもよく使用される自殺の名所で、Aさんは一瞬乗車させることを迷ったそうです。

しかし、そういうわけにもいかず、Aさんは「理由もなく乗車を拒否することはできませんでした。ただ、自殺に加担してしまったのではないかと後悔しています・・・」と語っていた。

タクシーの運転手が、「この客は乗せたくない」と思った場合、乗車拒否をすることは許されないのだろうか。鈴木義仁弁護士に聞いた。

「夜中に東尋坊へ連れて行けと言われ、背筋が凍りました」。福井県のタクシー運転手であるAさんは、過去のインパクトの大きかった客を振り返る。

Aさんはある日の午前1時ごろ、1人の50代男性を乗せた。その男性客に指示された行き先は、なんと自殺の名所ともいわれる「東尋坊」。サスペンスドラマなどでもよく使用される自殺の名所で、Aさんは一瞬乗車させることを迷ったそうです。

しかし、そういうわけにもいかず、Aさんは「理由もなく乗車を拒否することはできませんでした。ただ、自殺に加担してしまったのではないかと後悔しています・・・」と語っていた。

タクシーの運転手が、「この客は乗せたくない」と思った場合、乗車拒否をすることは許されないのだろうか。鈴木義仁弁護士に聞いた。

●タクシーが「乗車拒否」できるのはどんな場合なのか?

「タクシーの場合、道路運送法13条で、正当な理由がない限り、原則としてお客さんからの乗車の申込みを拒絶してはならないと定められています」

鈴木弁護士はこのように述べる。どんな場合に正当な理由があるのいえるのか。

「道路運送法13条ただし書きと、旅客自動車運送事業運輸規則13条で、例外的に乗車を拒否できる場合が規定されています。たとえば、次のようなケースです。

(1)半額の料金で行くように要求するような場合、(2)定員オーバーになる人数での乗車を要求するような場合、(3)高速道路料金を運転手に負担するよう要求するような場合、(4)一方通行なのに『逆走していけ』などと、道路交通法違反で走るように要求するような場合、覚醒剤の密売所に案内しろなど公序良俗に違反するような場合(5)地震などの天災で、通行が困難な道路を通らざるをえないような場合、(6)ガソリン缶など危険な物を持ち込もうとした場合、(7)行き先を告げられないような泥酔した者」

今回のケースは、どれかにあたるのだろうか。

「今回のケースでは、『東尋坊』に行くことを指示されましたが、それ自体は、乗車拒否の理由にはならないと思われます。

問題となるのは、自殺の名所とされる場所への乗車を引き受けることが『公序良俗に違反』するかどうかでしょう。引き受けることが『公序良俗に違反』するのであれば、それを拒否することは『正当な理由』にあたるからです。

ですが、自殺自体は犯罪ではないですし、『自殺しに行くのですか?』という質問をしなければならない義務は運転手にはないでしょう。また、『何しに行くのですか』と尋ねたとしても、『夜の海を見たい』とか『夜空を眺めたい』と答えられたら、本心では自殺するためには向かっていたとしても、それ以上追及することはできないでしょう。

そのため、東尋坊に行きたいという客の乗車を引き受けることは、『公序良俗に違反』するとはいえないでしょう。したがって、この点からも、運転手は乗車を拒否することはできないのではないかと思います」

(弁護士ドットコムニュース)

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る