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死刑容認8割「その中身知りたかった」ドキュメンタリー監督が追った「悩む世論」
2016年04月21日 10時37分

日本弁護士連合会は4月11日、東京・霞が関の弁護士会館で、死刑制度について考えるシンポジウムを開催した。死刑制度に対する世論を独自に調査した英レディング大学法学部専任講師の佐藤舞さん、ドキュメンタリー映画「望むのは死刑ですか 考え悩む"世論"」の長塚洋監督らが登壇し、死刑制度と世論の関係について問題意識を語った。

日本弁護士連合会は4月11日、東京・霞が関の弁護士会館で、死刑制度について考えるシンポジウムを開催した。死刑制度に対する世論を独自に調査した英レディング大学法学部専任講師の佐藤舞さん、ドキュメンタリー映画「望むのは死刑ですか 考え悩む"世論"」の長塚洋監督らが登壇し、死刑制度と世論の関係について問題意識を語った。

●「袴田さんの釈放を知っていると答えた人は、50%だった」

内閣府が2014年に行った世論調査では、「死刑は廃止すべきである」と答えたのは9.7%で、「死刑もやむを得ない」と答えた人は80.3%だった。2015年1月に結果が公表されると、メディアでは「国民の8割が容認」などの見出しで報じられた。

一方で、佐藤さんは2015年の2月から3月にかけて、「ミラー調査」と呼ばれる手法で、「8割」の中身を解き明かそうとこころみた。内閣府の調査と同様の条件で調査を行い、そこに「日本政府が死刑制度を廃止したらどう思うか」など、独自の質問をプラスした。「死刑はやむをえない」の回答の中には、徹底した死刑賛成派だけでなく、様々な考え方の人がいるのではないかと考えたのだ。対象人数は内閣府と同数の3000人(20歳以上)で、1551人から回答を得た。

「ミラー調査でも、内閣府と同じ質問をすると、80%以上の人が『死刑はやむを得ない』と回答しました。一方で、『もし、日本政府が死刑を廃止したらあなたはどう思いますか』と質問すると、この内71%の人が『政府政策として受け入れる』と答えました。『(死刑制度復活のために)署名やデモに参加する』など、政策に対して積極的な行動をすると答えた人は、ごく少数でした」。

また、佐藤さんは、死刑制度についての理解度を問う設問で、正答率が低かったことを指摘した。選択式の設問で、日本の死刑執行方法について「絞首刑」という正しい回答を選んだ人は51%だった。静岡の一家4人が殺害された事件の被告人として死刑判決を宣告され、約48年間を獄中で過ごした袴田巌さんが釈放されたことを「知っている」と答えた人は50%だった。

「日本の処刑方法はずっと変わっていないので、もっと正解率は高いと想定していた。知識を持たないままに、死刑制度について、賛成・反対の意思表示をしている」

●「死刑」を考える企画をテレビ局に提案したが、すべてボツにされた

佐藤さんが2014年に行った、別の意識調査を追ったドキュメンタリー映画。それが、長塚監督の「望むのは死刑ですか 考え悩む“世論”」だ。

20~68歳の男女135人が2日間、弁護士など専門家から死刑制度について学び、グループに分かれて討議する。2日間の前と後で、どのように考え方が変わったのか、その変化に注目する内容だ。

長塚監督はこれまで、制作会社でテレビ番組などの制作をしてきた。死刑制度に関心を持つようになってからは、テレビ局に死刑制度について問題提起する番組の企画を持ち込んだが、全てボツにされた。

「みんな死刑について、あまり考えていないのではないかと思っていた。実際、私も考えていなかった。だから、死刑について考えるテーマを扱いたくて(テレビ局に)提案したが、企画は通らなかった。あるときプロデューサーにはっきり言われた。『だって、世の中の8割がいいって言ってるんだよね』と。

私は、『その8割の中身はどうなっているんだ』という気持ちをずっと持っていた。『場合によっては(死刑も)やむを得ない』と答えておけば、それ以上考える必要がなくなってしまう。その壁を崩したかった」

(弁護士ドットコムニュース)

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